当センターの検査をご利用いただいている企業のご担当者様や個人のお客様にお話を伺いました。
お取り組みの一例として、ご紹介させていただきます。
まず、御社の概略と事業内容についてお伺いします。
弊社は創業77年目を迎えました。社会環境の変化とともに、運送業界の基盤づくりや成長を支えながら、総合物流企業として発展を重ねてきました。
現在では神奈川、群馬、静岡、愛知に拠点を置き従業員は200人以上、関東を中心に飲料関係の配送を行っています。
安全管理へのお取り組み状況はいかがでしょうか。
歴代の社長がトラック協会の会長職を務めており、ドライバーをはじめリフトマン他、事務所スタッフの安全教育にも力を入れております。教育はもちろんのこと、会議などもそれぞれ別々に行い、全社をあげて専門性を高めた安全管理に取り組んでいます。
やはりドライバーとリフトマンの安全管理は別々なのですね。SASについてはいつ頃から導入を始めたのでしょうか。
SAS検査は平成20年より行っており、はじめはフローセンサーの利用でした。しかしドライバーから「寝苦しい」「途中で取れてしまう」といった声もあり、パルスオキシメーターへの切り替えを行いました。検査事業者については、在庫数確保の問題から、平成25年より運輸・交通SAS対策支援センターさんにお世話になっております。弊社取締役からの紹介でした。
検査では数やスケジュールの調整が大変ですが、その点、運輸・交通SAS対策支援センターでは多くの機器を保持しており安定した供給に定評があります。導入の背景や経緯などを教えていただけますか。
当時はSAS(睡眠時無呼吸症候群)という言葉も今ほど一般的ではありませんでした。トラック協会のセミナーに参加して知り、SAS検査の必要性を感じたのが最初です。その後、試しに自分で検査をしてみて、導入を決めました。
導入の決め手はその辺りでしょうか。他にも、選んだ理由などはありましたか。
パルスオキシメーター方式の検査が手軽であったこと、そして台数や日程の確保がしやすかったこと、そしてやはり助成金も決め手でした。
導入前あたり、不安に思っていた点、懸念していたことなどはございますか。
当初懸念事項はあまりなかったのですが、やってみて気づいたことはあります。先に挙がった、フローセンサーが不評だったこともその一つです。他にも、実際にA〜Eの判定のうち、SASの疑いがあるというD、Eが出てしまった人をどうするかについても悩みどころでした。スクリーニング検査だけで終わってしまうのではなく、精密検査や治療など、次の段階にいかないと意味がないものになってしまうと思いまして。それについての対策を考えていきました。
導入にあたって苦労された点、工夫された点はどんなことでしたでしょうか。
ドライバーにとって、検査をしてくれること自体は良いこととして捉えてもらえましたが、一方で、悪い検査結果が出てしまった場合に会社がどういう対応をするのだろうか、ということも気にしていました。例えば重度のSASと診断されたらトラックに乗務できなくなってしまうのではないか?そういったことも労働組合は懸念しており、会社と時間をかけて協議を行っていきました。その中で、細かいことを決めながら少しずつ、乗務員さんに理解を求めていったような形です。
全員四年に一度から三年に一度、60歳以上は毎年、といった具合に少しずつ期間設定も変えていきました。また精密検査までは会社負担、シーパップ治療は本人負担、といったように細かいルールが作られていきました。このように様々なことが明確化されていくにつれ、不安も解消されていったように思います。
現在はどのくらいのペースで、何名の方がご利用していますか。
現在は、全ドライバー約120名を対象に3年に一度、60歳以上は毎年行っています。高齢になるほど、検査結果が悪い方へ転じるケースがあるため、このようになりました。平成28年からはこのペースで、新人の方は60歳以上の方が受けるときに一緒に受けてもらっています。時期は、例年通り助成金の発表後に、調整を進めています。
統計によるとD,E判定の方は1割程度です。利用して初めて気づいた点やメリットなどはありましたか。
SAS検査の結果、意外にも治療が必要な乗務員が多いことに気付かされました。思ったよりも悪い、というのが当初の印象です。A,Bが殆どかと思っていたのですが、Cなども多いことが分かりました。始めた頃はとくに、団塊世代も多く平均年齢が高かったことも起因したかもしれません。統計と大きく差はないと感じますが、治療を継続中の者も10人程度おります。
実際に検査を受けた従業員の方々や家族のお声はどうでしたか。
はじめはSAS検査に対する不安や結果に対する不安もあったようですが、最近は睡眠時無呼吸症候群がマスコミにも取り上げられるようになり、ドライバーの受け止め方も変わってきていると感じます。また社内でも、毎年やっている者はすっかり慣れており、今年もそろそろだな、といった具合に根付いています。多少の個人差はあるものの概ね良好に受け止められております。
時代は対処療法から予防へと意識が移り変わっています。睡眠時無呼吸症候群が定義されたのは1970〜80年代なのでまだまだ新しい病気といえますが、あらゆる病気と合併して悪化するため、年々注目度が増しています。今後一層、安全管理へのお取り組みをご理解いただける機会が増えるのではないでしょうか。
健康診断の追跡調査にしてもSASの治療にしても、自身の体や家庭を守るためとの説明をしておりますが、まだまだ十分に理解されている方は少ないと思います。しかしながら、検査をきっかけに、健康について見直す良い機会になっているようで、健康への意識を持つ者も出ています。
乗務前は必ずシーパップをやってもらう、といった具合に治療中の方のフォローアップも行っており、他にも定期的に治療データの提出をしてもらい、経過の把握にも努めています。
定量的な効果はありましたか。
治療を進めるうえで健康管理に目覚める者が出て、一人治癒したものがおりました。
それは大きな実績ですね。治りにくいものではありますが、治るものでもあることを、知っていただける機会になったのではないでしょうか。実際に、どのような治療とお取り組みをされたのでしょうか。
治療を進めるうえで健康管理に目覚め、普段の生活でも運動や食を見直しながら、2〜3年シーパップを続けていました。その後ついに昨年度、医師からシーパップは必要ないということになりました。毎月安全会議などで顔を見る機会がありますが、見た目も変わりとても健康的になりました。
ご本人の努力も素晴らしいですね。検査については今後、どのようなご利用をお考えですか。
現在出来上がった形を、引き続き継続していきたいと考えています。
会社の今後のお取り組みについて教えてください。
期間を短縮した定期検査も検討課題と考えております。頻度を上げるなど、より充実させたいと思っていますが、なるべくドライバーに負担をかけないことも大切なので、両立するよう考えていきたいと思います。
最後に、SAS対策支援センターについて2点伺います。検査結果が悪かった方には病院への紹介状をお付けしていますがご活用いただけていますか。
はい。利用しています。我が社はD判定を受けた者全てに精密検査を義務付けていますので、精密検査を行なう病院にもスムーズに対応して頂いております。会社負担で行っていただき、治療へ向けてのサポートをしています。
検査の判定結果は、当センターに返却いただいた検査機器よりデータを抽出し、専門医が問診票を1件1件個別に確認し、最終判定を行なっています。時には抽出データの検査結果を修正することもあります。必要な方への紹介状も、その際に専門医が作成し、不足事項などは手書きで追記するなど、一件ずつ丁寧に取り扱っております。面と向かって行う検査ではございませんが、だからこそ精度を高め、信頼性が高いものをお返ししていくよう努めておりますので、安心してご利用いただければ幸いです。
最後に、ホームページに睡眠時無呼吸症候群についての情報が色々掲載されているのはご存知でしたか。
存じませんでした。改めて活用させて頂きたいと思います。
当センターのホームページでは睡眠時無呼吸症候群に関する情報を沢山掲載しております。従業員の方への説明や、教育などにもご活用いただける内容も沢山ございます。またセルフチェックなど、従業員のご家族の皆様にもお試しいただきたい機能もございますので、ぜひご活用いただければと思います。
この度は、左より、安全推進部 次長 宮田忠様、安全推進部 部長 安全統括管理者 望月純一様、安全推進部兼人事労務部 次長 大井裕治様、安全推進部 課長 菅原十司夫様にお話を伺いました。
前身となる会社は関東大震災後の立ち上げだったということで、現代では国内輸送の殆どを占めるトラック輸送黎明期より、業界の礎として歴史を重ねてきた川崎運送様。
ドラマの撮影でもよく使われるという本社オフィスは桜が美しい公園の前で、川崎の中でも少しゆっくりとした時間が流れていた気がします。
詳しいお話をありがとうございました。
*川崎運送株式会社様
https://www.kawasakiunso.co.jp/
*インタビューは2020年3月現在の内容になります。