当センターの検査をご利用いただいている企業のご担当者様や個人のお客様にお話を伺いました。
お取り組みの一例として、ご紹介させていただきます。
まず、御社の概略と事業内容についてお伺いします。
弊社は1991年にコープ商品の物流を担う会社として設立されました。
当初は主に日本生協連の物流業務を担っていましたが、次第に全国生協の店舗や宅配の物流業務へと、取り扱い商品も常温から冷凍・冷蔵へと広がり、現在、全国18カ所、約4,800人の社員が生協の物流を支えている会社です。
ありがとうございます。安全管理へのお取り組み状況はいかがでしょうか。
運送に関わる関係法令を遵守するのはもちろんのこと、決められたことはしっかり守り、顧客から信頼される安全基準を確保し、事故防止に取り組みます。安全・安心なCO・OP 商品を取り扱う物流の担い手として、乗務員の健康状態の把握、運転指導や配送前の車両点検など、輸配送の安全向上を管理者ならびに乗務員一人ひとりが考え、取り組んでいます。
具体的なお取り組みや、重点を置いている内容などを教えていただけますか。
輸配送の安全を最優先に実現させるために、運行管理者の共育・育成、乗務職社員の共育とコミュニケーション強化を重点に取り組みを進めました。特に事故発生率の高い新規採用者や、乗務経験が少ない者、事故惹起者を重点指導対象者として位置付け、初期教育から単独運行までの教育を強化しています。
さらに、各事業所の事故傾向などを踏まえ、実態に合わせたカリキュラムで共育を進めることで、重点指導対象者起因の事故件数を削減するよう進めています。
また、無事故、無違反、アルコール反応をトリプルゼロで48日間継続させ、さらなる安全性の向上へつなげることができました。
配送車両についても、先進安全装置付き車両の導入を積極的に進め、環境対策の一環として大型ハイブリッド車の導入も行っています。
乗務員の方の力量に合わせた指導は安全管理の要でもあるように思います。人から設備に亘るまで、万全の体制で日々業務を遂行されているのですね。安全性優良事業者を示すGマーク認定も受けているとお伺いしました。
全国の運送系12事業所で交通安全対策の取り組みが評価され、Gマークを取得しています。2021年度は、桶川、所沢、小牧、鳥栖の4営業所で更新を行っており、継続認定を受けています。また運転者職場環境良好度認証制度「働きやすい職場認証制度」の一つ星の認証を、当社の12事業所で取得しました。これからも当社では、社員が働きやすい職場環境づくりをしていきます。
SASについてはいつ頃から導入を始めたのでしょうか。
SAS検査は2017年より導入し、導入開始時からSAS対策支援センターを利用しています。
ありがとうございます。導入の背景や経緯などを教えていただけますか。
車両事故防止に関する取り組みを行ってきている中で、近年健康起因による事故が複数件発生している状態でした。その中にはSASが原因と考えられる事故も発生しており、対策を打つ必要があると考えたことが導入に至った経緯です。
また、2012年に発生した関越自動車道でのツアーバス事故で乗客7名死亡した事故や首都高湾岸線でトラックがワゴン車に追突し4名死亡2名重体となった事故(いずれも運転手はSASと診断された)が発生していたこともきっかけとなっています。
勤務時間が一定でない運送業の方は、一段と健康管理が難しいですよね。事業所を全国に12ヶ所展開している貴社での検査は、数やスケジュールの調整が大変なことと存じます。その点、運輸・交通SAS対策支援センターでは多くの機器を保持しており、一度に沢山お貸し出しすることで安定した供給にご協力できているかと思います。導入の決め手はその辺りでしょうか。
トラック協会指定機関ということもあり、助成金の手続き等も含めスムーズに進むと考えたためです。また検査方法もパルスオキシメーター方式の検査が手軽であったこと、そして検査機器を借入れる台数や日程の調整がしやすかったことも理由として挙げられます。
ありがとうございます。導入にあたり、不安に思っていた点、懸念していたことなどはございますか。
検査を受ける乗務員が判定に引っかかってしまった場合、乗務員の立場として業務を外されてしまうなどとネガティブに考えないか、また管理者側として判定結果によっては運行させるのが厳しい(リスクが大きい)結果が出た場合、実質欠員の状態となるので業務をどう組み立てていくか、などを事前に協議をしていました。最終的には即乗務を外すわけではないこと、乗務時間短縮等の配車調整を行ない、少しでもリスクを回避する運用検討がなされています。
乗務員の方への配慮と業務改善の両立ですね。導入にあたって苦労された点、工夫された点はどんなことでしたでしょうか。
先ほど述べた運用面の課題解消について、が主な点になります。判定が悪かった場合の乗務をどうするか、検査頻度や、全国に乗務員が散らばっている為一斉検査にするか巡回で実施するか、など、様々な角度から検討して取り組みました。
検査導入自体はSAS等健康起因における重大事故防止の観点から社内理解は早かったと考えています。
現在はどのくらいのペースで、何名の方がご利用していますか。
毎年1回秋ごろに検査を実施しています。初年度は全乗務員が実施し、検査結果に応じて検査頻度を変えています。
A・B判定となった場合次回は3年後に実施とし、それ以外の判定の場合は翌年も実施という方法で実施しています。
初年度は289名が実施、2年目以降は前年AB判定以外となった対象者と前回検査以降の新規採用者、約120名程度が毎年検査を利用しています。
利用して初めて気づいた点やメリットなどはありましたか。
想定以上にSAS判定(疑いも含め)が多く、健康状態に注意が必要であると考えられる乗務員が多かったことです。
他にも、危機感を覚え点呼時には今まで以上に乗務員の体調管理をしっかり聞き取るようになったこと、また個々の乗務員に配慮した業務を割り付けられるようになったことなどが挙げられます。
乗務員の方々の安全意識が高まったのですね。実際に検査を受けた従業員の方々や家族のお声はどうでしたか。
SASとは無縁だと思っていた乗務員もSAS判定(疑いも含め)となり、今まで以上に健康に気を使うようになりました。またこのような機会が無いと検査を受けなかった可能性もあり受検できて良かったという声がありました。
SAS判定だった乗務員については、ご家族も一緒になり健康管理を意識して取り組むようになりました。
定量的な効果はありましたか。
2017年の検査導入後、乗務員全員対象となった3年目の2020年検査では、依然C判定以下(疑い含め)の社員が44%と大幅な改善には至りませんでしたが、C判定以下となった乗務員については検査後の健康管理や治療により改善傾向が数値に表れました。
当センターの過去10年約20万人の検査データでも、D,Eに加えC判定をも含むと48%という結果が出ています。
(参照 https://www.sas-support.or.jp/anniv/contribution/no1/)
D,E判定の方へは当センターより病院への紹介状をつけさせていただいておりますが、貴社におけるC判定の方含めてのフォローアップはより一層の安心につながるお取り組みですね。乗務員の方々の健康に対する意識も高まったようで何よりです。
検査については今後、どのようなご利用をお考えですか。
「待っている人の笑顔のために安全・安心を届け続ける」を使命に社員の健康第一を考え、今後もスクリーニング検査を通し社員自らの意識的な健康管理・生活改善を目指します。また事故リスク軽減・安全品質向上の為、物理的な安全装置を車両へ導入する事で乗務員の負荷軽減・安心して運転できる環境整備を進めて行きます。
最後に、SAS対策支援センターについて2点伺います。検査結果が悪かった方には病院への紹介状をお付けしていますがご活用いただけていますか。
結果に応じて(AB以外の判定者)については病院で詳細の検査を受ける運用としており、紹介状も含め有効に活用させてもらっています。
ありがとうございます。検査の判定結果は、当センターに返却いただいた検査機器よりデータを抽出したのち、専門医が問診票を1件1件個別に確認し、最終判定を行なっています。時には抽出データの検査結果を修正することもあります。必要な方への紹介状も、その際に専門医が作成し、不足事項などは手書きで追記するなど、一件ずつ丁寧に取り扱っております。面と向かって行う検査ではございませんが、だからこそ精度を高め、信頼性が高いものをお返ししていくよう努めておりますので、安心してご利用いただければ幸いです。
最後に、ホームページに睡眠時無呼吸症候群についての情報が色々掲載されているのはご存知でしたか。
こちらについては存じませんでした。
当センターのホームページでは睡眠時無呼吸症候群に関する情報を沢山掲載しております。従業員の方への説明や、教育などにもご活用いただける内容も沢山ございます。またセルフチェックなど、従業員のご家族の皆様にもお試しいただきたい機能もございますので、ぜひご活用いただければと思います。
この度は、運送事業部 部長 松本様にお話を伺いました。
詳しいお話をありがとうございました。
*株式会社シーエックスカーゴ様 https://www.cx-cargo.co.jp/
*インタビューは2022年4月現在の内容になります。