強い眠気に心当たりのある人は特に要注意

浅い眠りや就寝中の酸素不足は、疲労からの回復を大きく妨げ、日中の眠気や集中力の低下にもつながります。居眠り運転しそうになった、会議中など重要な場面で眠くなった、そんな強い眠気に心当たりのある人は特に要注意です。
また日中の疲れや集中力の低下などは、うつ病の症状とも似ています。そのため睡眠時無呼吸症候群だと気づかれずに、うつ病や自律神経失調症と診断されている場合もあります。睡眠の質が悪く、疲れが取れないことで感情の整理ができなかったり、ストレスがたまったりして、抑うつ症状をも引き起こしてしまうからです。既にうつなどの診断を受けていた人でも、検査によって睡眠時無呼吸症候群を発症していたと分かった事例もあります。

居眠りによって重大な事故が引き起こされることも

2003年に山陽新幹線の運転手が居眠り運転をした事故が起きました。緊急停止装置が働いたため幸い怪我人などは出ませんでしたが、のちにこの運転手の居眠りの原因は睡眠時無呼吸症候群であったと判明しました。

国土交通省はこの事故を受けて、交通や運輸などの業界に対し、従業員への問診や調査を徹底するよう通知しています。マニュアルを作成し、日中の眠気などを確認するチェックシートと、いびきや呼吸に関する11項目にわたる質問票を配り、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は速やかに精密検査を受けるように指示を出しました。
しかし睡眠時無呼吸症候群を発症していても、日中の眠気や集中力の低下などの自覚症状がない人が少なくないことが最近になって分かってきました。また、職を失う恐れから、自らの症状を過小評価してチェックしていた人々もいたため、国土交通省は2007年及び2015年にマニュアルを改訂しました。チェクシートのみに頼る手法を改め、スクリーニング検査(簡易検査)も同時に行うよう促すようになったのです。

スクリーニング検査には助成金が出る場合があります

これを受けて全日本トラック協会では、運送業に携わる業者やドライバーの検査を促す為、スクリーニング検査費用の一部を助成しています。これらの動きにより、運送業界を中心にスクリーニング検査を受ける人々の数は年々増加してきています。

睡眠時無呼吸症候群は合併症も併発しやすいとされています。重症化すると、心不全や脳卒中、糖尿病の元にもなる大変危険な病気でもあります。自覚症状がないまま長期間放置しますと、思わぬところで命の危険に晒されてしまう可能性もあります。いびきをかく、夜中に頻繁に起きる、寝起きが辛い、日中あくびが止まらない、このような些細な症状でも心当たりのある方は、手軽で比較的安価に行えるスクリーニング検査を一度受けてみることを強くお勧めします。まずは下記のセルフチェックも行ってみましょう。

検査機器について

当センターが提供するスクリーニング検査機器は、動脈血酸素飽和度(SpO2) と脈拍数を測定するセンサーを指に装着し、睡眠中に測るというものです。血液中酸素濃度を測ることによって、呼吸が正常に行われ酸素が取り込まれているかどうかを確認します。
無呼吸の間隔が長い、あるいは回数が多い、または気道が狭くなって上手く酸素を取り込めていない、といったことがあると、血液中酸素濃度が低下することになります。体全体の酸素が不足すると、全身に酸素を送ろうと心臓がより活発に働き心拍数も上がるなど、心臓にも沢山の負荷をかけます。スクリーニング検査は、このように睡眠中に脳や体にどれほどの負担がかかっているかを確認し、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるかどうかを判定するための検査なのです。

検査の結果次第では治療へ

スクリーニング検査の結果、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと判断されると、今度は精密検査を受けることになります。そして精密検査の結果、睡眠時無呼吸症候群であると診断が確定されたら治療へと進みます。

日本では睡眠時無呼吸症候群の患者数は正確に把握されていませんが、推定では治療が必要な患者数は300万人以上いると言われています。しかし、実際に治療を受けている人はその1/10程度であるとされ、治療が必要な多くの方がまだまだ見過ごされているといえるでしょう。

早期発見して適切な治療を行えば症状も改善し易く、体への負担も少なく済みます。さらに合併症を発症するリスクも軽減されることが知られています。
既に他の疾患がある方も、睡眠時無呼吸症候群を治療していくことで元々の病気が改善していったという報告も出ています。

呼吸という、あまりにも自然で普段気にすることのない恒常的な機能を見つめ直すことで、日々の生活における健康状態が大きく改善する可能性を秘めています。
自分自身や大切な人の健康を守る為にも、一度検査を受けてみることを習慣にしていただけたらと思います。