当センターの検査をご利用いただいている企業のご担当者様にお話を伺いました。
お取り組みの一例として、ご紹介させていただきます。
まず、御社の概略と事業内容についてお伺いします。
弊社は創業が1950年、グループ会社が107社、事業所数は国内333ヶ所、海外に398ヶ所ございます。従業員数は約48千人になります。事業としては3PL(サードパーティロジスティクス)をはじめ、発電所のボイラーやタービンなどの重量物の輸送、工場や図書館、事務所などの大型移転作業などを行っており、また、国際物流としては国内同様3PLをはじめとしてフォワーディング業務などを行っております。
大型輸送をはじめ、あらゆる分野の大型物流支えていらっしゃるのですね。安全管理へのお取り組み状況はいかがでしょうか。
弊社では自動車教習用コースを併設した研修施設を保有しており、従来よりドライバーへの教育を行っておりましたが、2019年度より体感教育を交えた安全を意識した教育に切り替えていきます。夜間研修など、人の見え方が服の色によっても異なるので、実際に体感していただくことが大切だと考えております。
また、国内グループ会社の約1,400台の事業用車両にドライブレコーダー、バックモニターを装着しており、まだ100%ではありませんが、ドライブレコーダーを協力会社にも装備してもらうようお願いしています。バックモニターに関しては協力会社3,400台に日立物流より順次提供し、装着して頂いてます。
一方、日々業務にあたる従業員には、発声操縦(呼称運転)の促進と交差点右左折時の確認及び一時停止の促進のため、車内にステッカーを貼ったり、一時停止時の追突防止用に車両後部にステッカーを貼ったりするなど、安全管理への啓蒙を日々欠かさず行なっています。
全社をあげて推進している抜本的施策と、日常的な安全管理を、包括して行なっていらっしゃるということですね。SASについてはいかがでしょうか。
日立物流グループでは、2009年から検査を実施しています。日立物流首都圏では、当初から、SAS対策支援センターを利用しています。
導入のきっかけは、日立物流「安全品質推進本部」より、増加傾向にあると言われるSASに対する対応として、事故・災害防止の観点から検査実施の通達があったことです。その後首都圏エリアのグループ3社の合併などを経て体制を整えてからスタートに至りました。合併したグループ会社がもともと導入していたので、その紹介もあります。協会からの助成金も活用しています。また、鼻に装着するフローセンサによる検査に比べ違和感が少ないと聞いていたので、その点も導入時の比較ポイントになりました。
おっしゃる通り、スクリーニング検査は自宅でできる手軽さと違和感の少なさも高評価となっております。反対に、ご不安や懸念点などはございましたか。また実際はいかがでしたでしょう。
検査スケジュールを立てましたが、予定通り出来るかどうか。ドライバーが反対するのではないだろうか。また「D・E判定者」が多数でたら業務に差し支える恐れがあるが大丈夫か、など、いくつか懸念点はありました。
しかし、ドライバーの反対はなく、手軽なことと健康管理の一環としてのメリットで理解を得られました。導入前には、説明会やお試し検査を行い、事前検証も進めました。お試し検査は営業所長や安全部署、幹部も含め50名程度体験してもらい、評判も上々でしたので、これなら大丈夫であろうと確信を得ることができました。全体で270人程の検査を行いましたが、1台を複数名で利用するため数ヶ月間にわたるスケジュールとなり、こちらは管理がやや大変でしたが社内の協力も得られ進めることができました。ドライバーを管理する営業所長にもお試し検査を体験させたことは、敬遠しがちな現役ドライバーへも積極的に検査を受けてもらう効果もありました。また、D・E判定は統計どおり1割少々で予想の範囲内でしたので、業務への支障もなく、治療へのフォローアップも行なっています。
SAS対策支援センターの検査機器は、業界の中でも精度が高いものを一律導入しています。一般的に3割以上、要精密検査判定が出てしまうところ、こちらは1割程度と正確性が高いことも好評です。現在はどのくらいのペースで何名の方がご利用中でしょうか。
3年毎定期検査で約250名に受けてもらっています。転職者などの初任ドライバーには教育時に説明しており、同意を得て実施するようにしています。
利用して初めて気づいたメリットはございましたでしょうか。
SpO2が表示される機器であることですね。リアルタイムで血中酸素濃度が表示されるので、装着し息を止めて苦しさを体感することもでき、無呼吸の怖さを直接的に伝えられるなと感じました。睡眠時無呼吸症候群は寝ている時のことで無意識なので、こうして実感することが大切だと感じます。今後そうした体感研修なども企画してみたいと考えています。
実際の社員の方々のお声はどうでしたか。
指に違和感があり、眠れなかったという意見もありましたが、概ね好評でした。一泊二日で自宅で済むというのも良かったようです。
社内外で、SASや健康管理についての意識の変化は感じますか。
費用面でも会社がバックアップしており、会社は従業員を守るという姿勢が示せたと感じます。そのことは、ドライバー及びご家族にも伝わったのではないかと思います。弊社では精密検査費用も負担しておりますので、特に精密検査対象となった方には安心していただけたと思います。従業員の健康は本人や家族のためはもちろんのこと、さらには、会社のためでもあると考えております。
定量的な効果はありましたか。
検査結果の悪かった方は、治療を受けさせることで、改善しています。健康にもなりますし、安全運転に効果が見込まれます。
検査について今後はどのようなご利用をお考えですか。
引き続き、入社時には必ず検査を行い、また、その後は検査結果に応じて期間を決め、定期的な検査を行います。検査結果の悪かった方には、再検査や精密検査をして頂き、必要であれば治療をして頂くなど、継続したフォローアップを行っていきます。
会社の今後のお取り組みについて教えてください。
2019年4月よりスマート安全運行管理システム(SSCV)を展開していきます。これは運行前点呼時のアルコールチェック・体温測定に加え、血圧や血中酸素濃度と自律神経などを測定することで、ドライバーの健康状態を可視化し、運行管理者とドライバーで共有するものです。これにより漫然運転を起こさぬようにコミュニケーションを取ることで、事故リスクの軽減に活かしてまいります。
更に運行中に車載器が検知した急制動・急発進・衝突警報や、ヒヤリハットの動画をクラウド経由で運行管理者に送り、帰営時の点呼にてドライバーと動画の振返りを行うことで、今後の安全運転に繋げていき、日立物流の安全品質向上を図っていきます。
このソリューションは日立物流グループ内全車に標準装備として展開しますが、今後は協力会社にも展開の輪を広げたいと思ってます。
産官学連携での研究から生まれたSSCVは、運行前および運行中のデータをクラウドに蓄積しAIで分析するこにより、リアルタイムで健康状態を把握することができるようになるため、事故防止はもちろんのこと、労働環境や安全品質の向上、さらには個人の健康管理へのフィードバックにもつながると考えています。事業者とドライバー、両方を支えるソリューションとして、事故ゼロの社会を目指し取り組んでいきます。
産官学連携でlot、AI導入と、最先端の技術を活用した非常に興味深いお取り組みです。データが集まることで一段と精度が上がり、安全管理が進むのではないでしょうか。
最後に、SAS対策支援センターについて2点伺います。検査結果が悪かった方には病院への紹介状をお付けしていますがご活用いただけていますか。
必ず持参するよう指示しております。病院によっては、紹介状に対し御礼がありました。
信頼性の高い紹介状であることが、病院へも伝わったのではないでしょうか。といいますのも、検査の判定結果は、当センターに返却いただいた検査機器よりデータを抽出し、提携の医療機関へ送られます。そこでさらに専門医が問診票を1件1件個別に確認し、最終判定を行なっています。時には抽出データの検査結果を修正することもあります。必要な方への紹介状も、その際に専門医が作成し、不足事項などは手書きで追記するなど、一件ずつ丁寧に取り扱っております。面と向かって行う検査ではございませんが、だからこそ精度を高め、信頼性が高いものをお返ししていくよう努めておりますので、安心してご利用いただければ幸いです。
最後に、ホームページに睡眠時無呼吸症候群についての情報が色々掲載されているのはご存知でしたか。
病院一覧があるのは存じませんでした。概算費用が分かれば比較できてもっと良いのですが。
ご指摘ありがとうございます。病院により内容が異なるのでなかなか難しいのですが、改善に努めてまいります。
当センターのホームページでは睡眠時無呼吸症候群に関する情報を沢山掲載しております。従業員の方への説明や、教育などにもご活用いただける内容も沢山ございます。またセルフチェックなど、従業員のご家族の皆様にもお試しいただきたい機能もございますので、ぜひご活用いただければと思います。
この度は株式会社日立物流の経営戦略部 川島 宏夫様、安全推進部 稲森 浩樹様、株式会社日立物流首都圏の須藤 博昭様にお話を伺いました。
詳しいお話をありがとうございました。
お話にも挙がった日立物流様の「SSCV スマート安全運行管理システム」について、詳しくは下記をご覧ください。
*SSCV スマート安全運行管理システム
http://www.hitachi-transportsystem.com/jp/sscv/
*株式会社日立物流様
http://www.hitachi-transportsystem.com/jp/
*株式会社日立物流首都圏様
http://www.hitachi-transportsystem.com/jp/metropolitan/
*インタビューは2019年3月現在の内容になります。